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小川町USPファームだより 2024年2月号

発行日:2024年2月9日
制作:US.Peaceファーム & NPO生活工房「つばさ・游」高橋優子

今月号は

をお届け致します。

小川町の畑情報

(文:高橋かの)

小川町の有機農業の講座から狩猟の世界へ  〜わな猟師・ツアーガイド・革細工職人 西田さん〜

小川町の「農ある暮らし講座(現:有機農業入門講座)」をきっかけに、 わな猟師・革づくり職人で革細工職人として活動されている西田双太さん。

わな猟師として活動すると同時に、7年ほど前に、 小川町の停車場通り商店街ではコミュニティスペース「わなしファクトリー」を立ち上げ、 現在は観光まちづくり会社(株)おいでなせえと連携したコミュニティのオーナーでもあります。

先月1月下旬に、そのおいでなせえさんと一緒に、 1泊2日で小川町をフィールドにした狩猟体験ツアーを企画されました。

西田さんが、現在も狩猟のご縁をいただいているのが横田農場さんであることと、 ツアーにて筆者(US.PesceFARMスタッフ高橋)が経営する 「小川まちやどツキ・三姉妹」が滞在場所となったことも重なり、 この度、取材させていただく運びとなりました。

今回、記事内の画像は、そのツアー中においでなせえさんが撮影されたものです。

西田さんが小川町・狩猟の世界に入ったきっかけ

西田さんは埼玉県出身。小川町ご出身ではありませんが、 この町での活動は「農ある暮らし講座(現:有機農業入門講座)」への参加がきっかけとのことです。

小川町に通いながら1年間、地元の有機農家である「霜里農場」、 「風の丘ファーム」、「河村農場」、「横田農場」という4軒の農家を回りながら、 農ある暮らしを学ばれました。

その際に、日常の生活で自分が野菜を食べられているのは、 農家の他にも地域の方や猟師の存在があってこそと知り、心を揺さぶられるように。

そこから、農家さんから狩猟についてのご縁をいただき、地元のベテラン狩猟者の方から、 猟師の考え方や心構えを教えていただいたのが発端となったのだそうです。

さかのぼると、学生時代には農業を専攻し、 その後社会人として働く中でも“生きる”ことについて考えて行った結果 「自給自足」という本質的な暮らしに興味を持ち、小川町の有機農業にたどり着いたという西田さん。

この講座へ参加したことがご縁で、 地元の方から商店街でお店として利用されていた空き家(のちに「わなしファクトリー」となる) をご紹介いただいたとのこと。

その後、空き家の店舗スペースを利用して、地元の方によるイベント利用や、 移住者や地縁者によるチャレンジショップでの活用…など、次々にご縁がつながり、 小川町にてコミュニティスペース「わなしファクトリー」を始めることになりました。

そして同時に、店舗をわな猟の拠点としても活用する、今の生き方の基盤ができることになりました。

「わなしファクトリー」=「Wanna See Factory」

店舗の奥では、とれた獣の解体・皮の加工・革細工の仕上げまでの全工程の作業場としても使われている 「わなしファクトリー」。 (住居スペースで、工房のため一般公開されておりません)

現在は、道路に面した1階の店舗は「おいでなせえ小川町」の観光案内拠点として使用されていますが、 それまでには前述のとおり、 イベントスペース、カフェ、チャレンジショップなどとして使われていたこともあり、 常に変化しながら多様な顔を持つコミュニティスペースでもあります。

先日のツアーは、西田さんとおいでなせえさんが主体で行われ、 その最中では「小川まちやど」(宿泊・キッチン利用)、 「横田農場」(野菜)、「白根屋」(パン)など、 地元の人との交流をする場が多く組み込まれていました。

夕食では、肉やそれらの食材を使った自炊だったのですが、 その日初めて居合わせた参加者同士が自発的に作業を進めている様子が印象的でした。

それを、西田さんに聞いてみると「私とご縁がある人は、私のお客さんを含めてなんだけど、 できないことを考えるのではなくて、 その場にいる人とその場の環境でできることを考えるのが上手い人が多いんですよねぇ。」とのこと。

狩猟者でもある西田さんの活動を伺うと、わな猟は当然ながら自然相手の仕事。

今年は、夏が長く、夏野菜が採れる時期が長かったと農家さんから聞き、 そこから獣が里に降りてくる時期を逆算をしながらも、猟期にずれが生じたよう。

また、革づくり職人の活動としては、革細工の元となる皮を加工する作業では、 猛暑の夏や氷点下になる冬など、小川町の環境に合わせて進めていくので、 皮の仕上がりもその時になってみないとわからないことが多いと言います。

「わなしファクトリー」という店名、 「わなし」=「わな猟師」だろうと思われますが、西田さんに伺うと、 「よく見てみると『わなし』を英語で『Wanna See』と書いてあるんですよね」とのこと。

つまり、これはコミュニティのオーナーである西田さんだけではなく、 町の人が「見たい」「会いたい」と思うもの(「Wanna See」は「見たい・会いたい」)が集まって、 変化しながら場が出来上がっていく(「factory」は「つくる場所」) ということを表しているということなのだそう。

なるほど。これまでの「わなしファクトリー」の様々な風景が思い浮かび、つながって見えた瞬間でした。

狩猟を通して、人々のご縁がめぐる

高橋のイメージでは「わな猟」というと、わなにかかった獣を至近距離でしとめる、 地道でかつ命がけの印象がありましたが、西田さんが狩猟のお話をされるときは、 至って軽やかに淡々としています。

それを少し不思議に感じていましたが、 「はじめはうまくいかないことはあったけれど、人の出会いによって自分が成長して、 自分のやりたいことが徐々に広がっていったり、経験により自分が成長していったりするのを感じています。

この町では、農ある暮らしや狩猟を通して、人のご縁を感じられるので、 小川町や比企郡で活動を続けているんですよねぇ。」

という西田さんの言葉で、その理由が少しわかったような気がします。

お話を伺いながら、西田さんのツアーは、田畑を荒らす獣害を抑えたり、 狩猟を広めていくこと自体が目的にするだけでなく、有機農業の里である小川町で狩猟に出会い、 さらに現在進行形で出会いを得ていくことで、 それを周りに還元していっているのではと考えるようになりました。

そして、現在、町の外からくる移住者や関係人口として受け入れて、徐々に変化が感じられる小川町。

そんな渦の一端を肌で体感してもらうことが、 ツアーや拠点運営など活動の目的なのではないでしょうかと取材をしながら、感じとっていきました。

その基本となるものは、農業も狩猟も自然と共にあり、そこでは人間が絶対ではないからこそ、 普段の生活の中では得られない学びがあり、それらが小川町にはあるということ。

他の分野でいうと、きっと林業・漁業・発酵… など、 多くの現場で同じことが言えるのだと改めて思いました。

現在、こちらのツアーは、未経験の方・初心者の方にも楽しんでいただけるプランとして、 3月15日までの【限定開講】で予約受付しています。

ご興味のある方は、下のリンクからお問合せください。↓

※ 体験のため、狩猟免許をお持ちでない方や未経験の方でもご参加いただけます。

画像提供:株式会社おいでなせえ

【シリーズ】未来につながるオーガニック給食(第4回)

雑誌『現代の理論』から

雑誌『現代の理論』2024冬号テーマ「足るを知る」 思想特集「オーガニック学校給食への熱いうねり」に寄稿しましたので、 その中から少し私の思いをお伝えしたいと思います。

霜里農場・金子美登さんと持続可能な未来を目指して有機農業の普及啓発に取り組んでくる中で、 生産と販路が一体とならないと広がっていかない事を痛感し、確かな販路として学校給食を捉えました。

こどもの健康や持続可能な未来を考える時、その安全性から、 学校給食への有機野菜導入に反対する人はいないでしょう。

私がこの課題に取り組み始めて4年が経ち、 その間の判った事などをまとめたいと考えていた時、 同時代社さんから学校給食の特集を組むので書いてみませんか? と、ご依頼を頂き、まとめたものの一部をお伝えしたいと思います。

今の学校給食への有機野菜導入に当たり、何が課題なのか。 農水省が主催する「有機農業と地域振興を考える自治体ネットワーク」(89市町村22県3団体加盟)の中で、 有機野菜を導入しようとする時の課題は何ですか? というアンケートをとりました。

結果として、①安定供給、②価格、③現場の大きく3つに集約されました。

①安定供給

日本の有機農産物生産高は0.6%ですので、全国1700ほどもの市町村で有機農家がいないのが現状です。 食数が何千人分ともなると、その野菜の量も半端ではありません。その量を賄うことが出来ないのです。

②価格

有機野菜は農薬も化学肥料も使いませんので手間がかかります。 その分、価格は高くなります。学校給食は公共調達なので、入札制度が設けられており、 市販の慣行農業の野菜より高くなり、価格の面で入札を通るのは難しいのです。

③現場

学校給食の現場は教育委員会管轄で所轄官庁は文科省、 野菜は農林課で農水省、健康は福祉保健課で厚労省、環境は環境省、 お金は財務省と縦割り行政の中にあり、横串を刺すのは大変です。

野菜の集荷・配送システムなども複雑です。

学校給食は沢山の人が関わり関係が複雑で利害関係も加わり、 がんじがらめで動けない状況があります。 しかし、そのがんじがらめになった学校給食の現場で、 果敢に挑戦してこども達のためにより良い給食を目指して活動している様々な人たちの成功事例があります。

どうやって、からまった紐を解きほぐしていったのでしょうか?

その方法を知りたいと、 日本各地で学校給食有機化に頑張っている皆さんにお声がけをして実行委員会を立ち上げ、 成功事例を共有化すべく、毎年農閑期に「オーガニック学校給食フォーラム」を開催しています。

その第3回目が今年の2/12(月・振替休日)にオンライン開催されます。

草の根の市民や市民団体が汗を流して議員さん達などと協力して、 学校給食センターを巻き込み、有機野菜導入に成功した詳細をお話して頂き、学びます。 最後は地域別交流会です。近くの人とつながって、励ましあっていきましょう。

※ 当日オンライン視聴できない方のためにアーカイブ配信も行われます。

詳細・申込はこちらから ↓

『現代の理論』の後半部分は次月にご紹介します。⇒ Amazon『現代の理論』2024年冬号

雑誌「現代の理論」表紙と目次

今月の小川町の話題

★【情報1】○ 停車場通り商店会 分科会『小川町空き店舗未来会議』

小川町駅を降りると、どこか懐かしい雰囲気の商店街が伸びています。 駅前通りを中心に出店店舗の事業者40組あまりが加盟する 「小川町停車場通り商店会」という団体があります。

その活動の中で、年々増える空き店舗をやる気のある次の代に繋げて活用できないか? と、2023年春に分科会が立ち上がりました。 今年度は、空き店舗の調査、物件オーナーさんや地域の方へのヒアリングから始め、 物件活用に向けたワークショップを実施してきましたが、先日、 いよいよ一軒の空き店舗を対象に、テナント向け内覧会を開催しました。

この分科会のメンバーは、商店会会員の有志に加え、 関心を持ってくれた地域おこし協力隊員も参加。 専門分野や職種は、移住サポート、宿泊、不動産、建築、まちづくりなど多様です。 会議の場には、埼玉県、小川町役場、小川町商工会、物件周辺地域の皆さんにも参加してもらっています。

「有機の里・小川町」「小京都・小川町」と、 徐々に注目を集める小川町の価値ある資源が引き継がれていくと良いです。(文:高橋かの)

<内覧会前のオーナーと地域の方との座談会の様子>

★【情報2】○ 北裏St.フェスティバル 2024春 3/31

小川町の市街地は、元街道や商店街を縫うように、北裏通り・南裏通りほか、 雰囲気の良い細道がたくさんあります。 今は暗渠になっていますが、少し昔まではそこに生活水路も走っていたのだとか。

そんな裏通りに焦点を当てることで、移住者だけでなく若者だけでなく、 小川のまちなみをいいねと思う全ての人とちょっと楽しい休日が過ごせるのでは? と、始まったのが「北裏St.フェスティバル」です。

2022年9月、2023年3月、11月と年に2回ペースで開催されており、 ありがたいことに近隣町内会からも告知や出店の協力をしようかと言っていただけるようになってきています。

ということで、来る3月31日(日)に4回目の開催が決定いたしました。 今回は路上も会場として使わせていただくつもりでいます。 運営スタッフや出店者を2月いっぱい募集しておりますので、 興味のある方はお問い合わせください!(文:高橋かの)

<今回の出店者・運営募集のチラシ>

<昨年春に開催された時の様子>

有機農業に関する全国の話題

★【情報】国立女性教育会館(NWEC)の存続に向けて署名活動展開中 締切3/31

小川町の隣、埼玉県嵐山町に1977年に創設された国立女性教育会館(NWEC)があります。 女性の地位向上を図るために建設された国の機関です。 これまで50年あまりにわたり、男女共同参画法のもと、 女性の地位向上の為の研究や研修など様々な企画が行われてきました。

元日本農士学校の跡地(※)という広大な敷地には、 セミナー室や大きな講堂、宿泊施設、プール、テニスコート、体育館、 音楽室など多様な施設が付随しており、女性の多様な活動を精神的にも肉体的にも支えてきました。

※ 日本農士学校の1期生の一人として、金子美登さんのお父さん、万蔵さんがいらっしゃいます。 万蔵さんは長く同窓会長を務めておられました。 農士学校創設者は陽明学者・思想家の安岡正篤氏。 当ファームだより2020年6月号に詳しい記事がありますのでご参考に。

第1回全国有機農業推進大会の際にも、NWECを会場として使用しました。

この施設が、存続の危機にたっています。 老朽化を理由に、国が撤去や機能移転を検討しているのです。

是非、存続に向けての署名活動にご協力ください↓。(文:高橋優子)

<署名サイト>

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