小川町USPファームだより 2023年11月号
発行日:2023年11月10日
制作:US.Peaceファーム & NPO生活工房「つばさ・游」高橋優子
今月号は
をお届け致します。
【レポート】10月14日 稲刈り&枝豆収穫体験会
10月14日土曜日、暑いくらいの陽気の中、通年の農業体験会の中でも毎年人気の稲刈り、 そして枝豆収穫の体験会を行いました。
6月の体験会で植えたもち米の収穫をし、 7月の体験会でまいた大豆を枝豆として美味しくいただきました。
小川町の畑情報
(文:高橋かの)
風の丘ファームさん 〜「生き物探し」イベントの一日〜
10月28日土曜日。小川町を拠点とする観光まちづくり会社、 「おいでなせえ」さんが主催するイベント「WildLeaf Quest 落ち葉のまちの冒険ツアー」に参加してきました。 今回の体験フィールドは、2021年12月に取材もさせていただいた有機農家の「風の丘ファーム」さん。
⇒ 風の丘ファーム
畑や畑の周りの道、林などで、生き物や植物の観察をするということで、 面白い切り口だなと思い、US.PeaceFARMスタッフ高橋も参加してきましたので、 感想をレポートします。
風の丘ファームさんは、1984年に小川町に入植、2008年に農業生産法人を設立された農家さんで、 多くの研修生を輩出し続けています。場所は、八和田地区というエリアで、 熊谷や寄居にも近いなだらかな丘が多く、田んぼやぶどう栽培などが盛んなエリア。 各参加者は自車やバスで来場していました。
出荷場の前で輪になり、自己紹介。スタッフ含めて20名弱で、都内からいらした方、 実家が小川町という近隣地域の方、小川町にここ数年で移住してきた方などが参加されていました。 また、「関係人口創出・拡大のための対流促進事業(内閣府地方創生推進室)」 を活用していることもあり、観光や農業系の企業の方も数名いらしていました。
今回のイベントでは、前半は、 いきものコレクションアプリ『Biome(バイオーム)』(株式会社バイオーム制作)というスマホアプリを使って、 生き物・植物を写真としてコレクションしたり、それらの種類などの情報を学んだりしていくのだそう。 また、後半は、生き物探しをしながら、お土産用の野菜の収穫も行い、 みんなで風の丘ファーム田下さんお手製のお昼ごはんをいただいて終了という流れ。
初めて『Biome』をダウンロードして使用しましたが、写真を撮ると、 撮った季節と場所からいきものの名前を判定してくれます。 また、生き物ごとの「レア度」に応じてポイントを貯めていくと、バッジがもらえるなど、 ゲーム感覚で楽しめます。
株式会社バイオームのスタッフの方もいらしていて、アプリの使い方は教えてくださるのはもちろん、 率先して生き物を探して場を盛り上げてくださったので、 大人も子どもも思っていた以上に熱中していました(笑)
道端の草や木、虫、落ち葉や抜け殻なども判定できるので、見つけては写真を撮って、 コレクションしていきました。
撮っていくうちに「この草ばっかりだな … 」「この虫はもうさっき見つけた … 」と、 この地域に多く生息する生き物がわかってくるのも面白かったです。 中には、セイタカアワダチソウのように、要注意外来生物リストにも名前が載っていたような植物は、 レア度に関係なく高ポイントのものもありました。 (環境調査に特化したサービスも展開している株式会社バイオームならではの仕組みなのかなと思います)
歩いていくと、風が気持ちいい丘の上の畑に到着しました。ここで休憩となります。 休憩中、田下さんが「お楽しみがある」と、そこに積んであった堆肥の山を掘り出しました。 すると、中から大きなカブトムシの幼虫がごろごろ。 これもよく観察して、最後に堆肥の中にまた潜っていくのを見届けました。
そのまま、葉物野菜が綺麗に並ぶ畑をくだっていきます。 ナバナやノラボウナ、コブタカナ、カラシナ、ラディッシュなどが交互に植えられていました。 ナバナなどは、またその中でも複数種類があるそう。とても豊かな風景でした。
少し若い葉物野菜は、塩とオリーブオイルすらいらないくらい味がしっかりしていて、 その感動を参加者どうしで共有していました。
木々が多い道は、涼しく、ここでは落ち葉やどんぐりなども見つけました。
この辺りは古くから「ため池農法」が行われていて、雨水を貯めるための池も多い地域なのですが、 そこに生えたガマも、この距離で判定できました。
収穫体験は、詰め放題形式。色とりどりのカブや大根、小松菜、チンゲンサイ、 サントウサイなどをハサミを使って収穫しました。
ここで、田下さんから野菜を食べるハスモンヨトウについての話がありました。 ハスモンヨトウは、芋類、根菜類、葉物類、果物などなんでも食べるガの幼虫。 毎年夏に発生するのですが、今年は9月に台風のような強い雨や風がなくて振り落とされなかったこともあり、 その数が多かったとのこと。 手で取ったり、成虫をフェロモントラップで捕まえたり、対策にかなり労力を割いたのだそうです。
また、このハスモンヨトウは自然に発生する「緑きょう病」という菌でも数が押さえられます。 しかし、この緑きょう病も25℃ 以下の涼しい環境と、湿度が必要なので、 暑くて秋雨がなかった今年の夏は広まりが遅くなっているそう。
このように、他の菌や微生物などの生き物との共生の中で農作物を育てているため、 「有機農家には、周りの里山の環境が大切なんです」と、田下さんはお話しされていました。
お昼ごはんは、会場の横でまさに今炊いているご飯と、具沢山のけんちん汁、 青山在来大豆の枝豆、大根葉のふりかけ、麦茶。
けんちん汁の中のきのこだけは知り合いの育てたものだそうですが、 その他、味噌に至るまで全て風の丘ファーム産。 ご飯も枝豆もお腹いっぱいおかわりさせてもらって、秋を堪能しました。
解散の時間が14時前と早かったので、その後に小川町を楽しむ計画を立てている方もいて、 そんな会話が弾んでいました。
この「Wild Leaf Quest 〜落ち葉のまちの冒険ツアー〜」というイベントは、 小川町の「食」と「農」を楽しむ全5回の体験プログラムとなっていて、 この風の丘ファームさんの回が初回でした。
この後は、11月25日の「木のプレートを作って、おいしい野菜を食べよう!」が 第2章としてリリースされていて、その後も年明けまで、 「落ち葉拾い」「踏込温床等堆肥作り」などが予定されているそうです。
田下さんのお話にあったように、小川町では有機農業はもちろん、昔ながらの慣行農業でも、 山や地域の資源を大切にする農業が盛んです。 小川町において、農業と里山の自然は切っても切り離せない関係だからこそ、 そこに参加者が目を向けられるような「生き物探し」というテーマがとても面白いなと感じました。
おいしくて安全な野菜を購入することで農家さんを応援することはできますし、さらに、その畑を 訪れ、直接その生き方に触れることで、今地球上で起きていることを感覚的に捉えることもでき る。ということで、農家さんとの顔の見える関係の大切さを再認識した一日でした。
【シリーズ】未来につながるオーガニック給食(第1回)
金子美登さんの想いを受けて
霜里農場・金子美登さんは1971年に小川町で有機農業を1人で始め、ずっと孤独な戦いでした。 食の生産において本道である有機農業を心に決め、ひたすら地道に己の意志を貫いてこられました。
そして、仲間たちと連帯し、2006年12月8日「有機農業推進法」が制定され、やっと、 日本という国において有機農業という言葉と存在が認められたのです。
それから17年という月日が経ち、様々な有機農業推進にかかる政策が実施されましたが、 有機農家率は0.2 → 0.6%とあまり増えていません。 数字を見ると3倍になっていますが、 100人農家さんがいて1人いるかいないかという実情です。何とも情けないではありませんか。
私(高橋優子)は非農家ですので、霜里農場・金子さんのお手伝いをしながら、 どうやったら有機農業が広がって行くのかずっと考えて続けてきました。
その最大の理由は、手間暇かけて有機農産物を作っても売れないからです。 最大の課題は販路です。
どうやったら売れるか? 有機野菜を必要としている人達はどこにいるのか? そう考え分析していった時、こども達が食べる学校給食にたどり着きました。
今、学校では、アレルギーや行動に支障をきたすこどもが増えており、 その原因の一つとして残留農薬が上げられていました。
人は食べた物で出来ている。こどもは3食のうちの1食を給食でまかなっています。
こども達は未来です。シンプルに考えて、 こども達の食べる給食を安全な物にしたいと願いました。 こども達の健康や未来に責任を負うのは親や周囲の大人の責任ではないでしょうか。
学校給食は生徒数、給食日数、献立も決まっています。 残留農薬などない安心して食べられる有機野菜を計画的に生産し、 導入することで確かな販路となるのではないかと考え、4年前から学校給食有機化に取組み始めたのです。
それ以来、日本や世界の学校給食はどうなっているのか、と調べはじめ、 今年の夏は、 フランスの学校給食現場で給食の有機化活動をしているCPPフランスが行った日本各地でのセミナー24日間や、 韓国の無償オーガニック給食の現場見学ツアーに参加してきました。
次回から、そのルポなどを通して、未来につながる学校給食を考えてみたいと思います。
※ 編集部より補足
今号の【有機農業に関する全国の話題】にある11月11日のイベントでは、 当記事執筆者の高橋優子さんが、学校給食がテーマのトークに登壇します。 オンラインでも聞けるので、興味のある方は、ご覧ください。
今月の小川町の話題
★【レポート】恒例 小川無農薬無化学肥料栽培提携米を食べ比べしてみました
2023年産提携米が10月から供給が始まりました。購入されている方、新米の味は如何だったでしょうか?
10/7に横田農場さんで開催された「US.PeaceFARM 稲刈り体験会」で恒例、 お米の食べ比べを実施。 1つは小川提携米「コシヒカリ」、1つは宮城県産新米の某銘柄です。
結果は、提携米12:宮城県産米12、となりました。
今年は夏の異常な暑さと水不足でお米の実の入りが危ぶまれましたが、 何とか収穫する事が出来ました。 農家さんからは今年の夏のような異常気象が続くとお米の生産が難しくなる。 お米の品種も耐暑品種に変えていく必要がある、と言われています。
地球沸騰時代にどう持続的な食料生産をしていくか、皆さんも少し考えて頂けると嬉しいです。
<お米食べ比べと結果>
★【情報1】○(まる)シェ・おがわまち 11/26
マルシェとまち歩きを同時に楽しめる1日イベントも第4回となります。 小川町の各所で様々な企画をやっていますので、町巡りを楽しんでください。
- 日時:
- 11月26日(日)10:00~15:00
- 場所:
- 小川町内(チラシ参照)
- 主催:
- ○ シェ・おがわまち実行委員会
★【情報2】映画会とトークのお知らせ『リアルボイス』 11/19
監督の山本晶子さんは親のネグレストという児童虐待を受け、その後児童養護施設などを経て、 現在は支援の側に回り、このドキュメンタリーを撮りました。
山本監督のお話と大塚幸穂さんによるチェロの演奏もあります。
- 日時:
- 11/19(日)13:00~16:30
- 場所:
- NWEC(国立女性教育会館研修棟2F大会議室)
- 主催:
- 生活クラブ埼玉小川支部
- 会費:
- 無料
- 定員:
- 100名
- 問合せ:
- 090-4952-4462(野地)
- 申込み:
- 生活クラブ埼玉・イベント申込みフォーム
- 締切り:
- 11/3(金)
有機農業に関する全国の話題
★【情報】「守ろう つなごう 未来を彩る希望のタネ」自然農法シンポジウム&フェスタ 11/11
日本と世界中、私たちの食生活が大きな変化を遂げています。 遺伝子組み換え食品、ゲノム編集、環境の変化、農家の減少、エネルギーそして、種の課題など、 これらの課題に立ち向かい、持続可能な未来を築くために集まり、学びませんか。
この度、NPO法人秀明自然農法ネットワークは設立から20周年を迎え、 この節目を恵泉女学園大学にて「シンポジウム&フェスタ」を開催します。
- 日時:
- 11月11日(土)10:00~15:30
- 場所:
- 恵泉女学園大学(東京都多摩市2丁目10-1)
- 主催:
- NPO秀明自然農法ネットワーク
- 詳細・申込み:
- Peatix「守ろう つなごう 未来を彩る希望のタネ」
- ※ 同時配信と後日アーカイブもこちらからお申し込みになれます。
素晴らしいスピーカー陣が登壇します
インドの環境活動家であるヴァンダナ・シバ博士は、生命の尊厳を守り、 貧しい人々や女性の視点から環境問題を探り、世界の農民や環境活動家に大きな影響を与えています。
アフリカのザンビアからは、バーバラ・ハチプカ・バンダ氏が登壇し、 女性農民組合3000人を率いてザンビア自然農法開発プログラムを進めている展開などのお話しをしてくださいます。
分科会も充実しています
- 「自然農法ラーニングプログラム」 - 自然農法ユーチューバー、今橋伸也氏
- 「日本の食料事情」 - 東京大学大学院の鈴木宣弘教授
- 「自然農法の視点から考える日本の(有機)農業の課題と今後の展望」
- 農研機構上級研究員、池田成志氏 - 「学校給食をオーガニックに」 - 川田龍平参議院議員と学校給食関係者
★ NPO生活工房つばさ・游の高橋が分科会4 で川田龍平参議院議員と対談します。
マルシェや音楽などもあります
当日は、20店舗以上のマルシェも開催され、おいしい食べ物や商品が並びます! ぜひお越しいただき、持続可能な未来への第一歩を踏み出しましょう。
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未来への希望を育み、自然農法の魅力を共に探求しましょう!