小川町USPファームだより 2022年10月号
発行日:2022年10月7日
制作:US.Peaceファーム & NPO生活工房「つばさ・游」高橋優子
今月号は
をお届け致します。
小川町の畑情報
(文:高橋かの)
横田海さん(横田農場)挑戦12年目、有機農家のメロンが人気でした
今月は、8月、9月に小川町内で話題になっていた「メロン」について、皆さんにご紹介します。
横田農場さんの畑取材の中で、度々登場していたメロン。 これだけを取り上げたことはなかったのですが、実は、横田農場さんの中でも、 次男の海さんが独自の挑戦として、12年間試行錯誤しているというストーリーがあります。
きっかけは、農業学校の必修科目。 収穫したものが、メロンが苦手なお母さんにも「これなら食べられる」と高評価だったため、 実家のビニールハウスでつくってみることにしたのだとか。 ただ、1年目はとてもよくできたものの、2年目以降かなり苦戦続きで、 やっとコツを掴んできたのは、この5年くらいの話とのことでした。
コツを掴んできたとはいっても、80個ほどを販売するつもりで作って、 収穫出荷できるのはその半分の40個くらいの確率だったそう。 今年は特別によくできて、3分の2くらいとれたかも! とおっしゃっていました。
メロンは嗜好品のイメージがありますが、 実際に他の作物よりも肥料が必要で、病気にも弱いので栽培難易度は高く、 横田農場として作り続けていくのかを議論することもあるのだそうです。
こちらは、2019年の3月に取材でお邪魔した時。 海さんが、手書きのノートを見ながら、黙々と種まきをしていました。
4年前からは、小川町の洋菓子店「パティスリートリヨンフ」さんにて、 メロンのショートケーキが季節限定で販売されていて、手土産などに人気です。
<パティスリートリヨンフ>
今年は、一年目にも匹敵する良い出来だったため、 「有機野菜食堂わらしべ」さん、「げんきの木」さん、 「農家のcafe & bar TRANSIT」さんでもデザートに使われました。
<有機野菜食堂わらしべ>
<げんきの木>
私も、毎週日曜朝に店番をしている「TRANSITモーニング」の甘い系モーニングメニューとして、 ひと玉仕入れさせてもらいました。
<農家のcafe&bar TRANSIT ※撮影: 海さん>
初出し当日は、早朝から、横田海さんが直々に来店。 良いカメラで、自らブツ撮りをしてくださいました。
仕入れのやりとりの中でも、 木熟れ・追熟の段階を踏んだベストな状態のメロンを届けられるよう、 ひと玉ずつの受け渡し日の調整が綿密で … こんなに愛情のこもったメロンもそうないだろうなと驚きました。
ウリ臭さを感じないほどの甘い香りと、皮ギリギリまでやわらかく蜜たっぷりの果肉で、 大満足でした。
栽培に関して、海さんに振り返りのコメントをいただきました。
「10年も作り続けているので、そろそろ売り物になるものをつくっていかねばと思っていたところで。 今年は、堆肥量や水管理が上手くいったのか、良い結果だったので、 来年以降も「8割出荷」を目指してやっていきたいです。
そして、今は、飲食店や本当に関わりの濃い方にしか届けられていないけれど、 農業体験に来てくれる人など普段からお世話になっているいろいろな人に食べてもらえるようになったらいいなと 思っています。」
また、最後に、味に関しても最近考えていることがあるとのことで、ひとこと。
「甘さを追求して特有の香りを失ったトマトや、 苦味を軽減したピーマンが果たして本当に必要なのか? 野菜の下処理でえぐみを取り除く工程があるが、そのえぐみの正体ってなんなんだろう?
果物の甘さに関しても、舌で甘い、おいしいと感じるのは、 糖度だけが指針にはならない気がしていて … うちのメロンでも、それを感じてもらえるんじゃないかなと思います。」
それは農薬の使用不使用以外に要因があるのでは、 と海さんは予想しているそう。栽培方法なのか、外部の環境なのか、はたまた種なのか?
確かに、土・水・光・肥料・種などの材料が良いからといって良い作物ができるのではなくて、 与える量とタイミングや、収穫の時期、など様々な要因から品質は決まってきますもんね …。 考えさせられる取材の最後でした。
皆さんの中に予想はあるでしょうか?
霜里農場・金子美登さん訃報
9月24日。霜里農場の金子美登(かねこよしのり)さんが逝去されました。74歳でした。
田んぼの見回り中の心不全だったとの事で、美登さんらしい逝き方だったのではないでしょうか。 病院で対面させて頂いたお顔は苦しむ様子もなく穏やかな顔でした。
当初、家族の意向で家族葬として静かに行いたいという希望でしたが、 9月26日の農業新聞朝刊(全国版)に訃報が掲載されたため、 各新聞からの取材が相次ぎ、10月27日のお通夜は、会場に入りきらないほど沢山の方がお別れに訪れました。
元研修生の皆さんが全国各地から駆けつけ、 会場のあちこちで金子美登さんの思い出話をされているので、まるでミニ同窓会のようでした。
翌9月28日の告別式では、篠原孝衆議院議員が弔辞を読まれ、 元研修生の風の丘ファーム・田下隆一さんがお別れの言葉を述べられました。
沢山のお花や弔電を頂き、最後の出棺の折には、霜里農場の野菜とお花で飾り、 お見送りさせて頂きました。
日本の有機農業界の重鎮として、まさに重しとして長生きして欲しかったです。
「お礼制」という農産物に値段を付けないというギフトエコノミーの形を40年も前から実践されていた、 深い思索の上に立つ哲学的農家でした。
私たちは金子美登さんの求めたところを求め、意思を継いでいきます。
合掌
<葬儀の様子: 遺影は OgawaOrganicFes からとりました。 一粒万倍の字は私が揮毫させて頂きました。 USP研究所代表・當仲寛哲様からなど多方面からの献花が並びました。>
金子美登さんに関するページ
- 「OGAWA ORGANIC FES趣旨説明」OgawaOrganicFes2014より
- 「先駆者の言葉」SHARE THE LOVE for JAPANより
写真は、写真家・公文健太郎さんに撮って頂いたものです。
この作品が私は大好きです。美登さんの内面をよく表していると思います。 - 「プロフェッショナルの流儀」2010年1月5日NHK放送
スタジオに畑を作って欲しい、というNHKの要望で、農場の土を運び込んだ事、
「プロフェッショナルとは?」という問いかけのテイクを10数回繰り返した事など
思い出します。 - 映画「もったいないキッチン」より(※ 金子さんの部分を期間限定で公開中)
今月の小川町の話題
★【情報1】おがわまち里山フォーラム 11/12
NPO生活工房つばさ・游(代表:高橋優子)が取り組んでいる 「小川町上横田大沼地域循環共生圏プロジェクト」の発表を兼ねて、フォーラムを行います。
基調講演は、(株)中央園芸・押田大助氏に「『大地の再生』視点を生かす」 というタイトルでお話し頂きます。
里山を如何に活かしていくか、 「大地の再生」の矢野智徳氏との実践を通して興味深いお話しが聞けるでしょう。
また、NPO生活工房つばさ・游とOKUTAが協働して行っている里山保全活動やこめまめプロジェクトとの連携による、 上横田大沼地区の谷津田とその周辺の里山保全活動についてのパネルディスカッションも予定しています。
詳細は次月にまたお知らせさせていただきます。
- 日時:
- 11月12日(土) 13:30〜16:00
- 場所:
- 小川町立図書館2F視聴覚ホール (埼玉県比企郡小川町大字大塚99番地1)
★【情報2】満月焚き火会 10/10
恒例の2ヶ月に一度の満月焚き火会。夜の畑で、焚き火を囲んで語り合ってみませんか?
- 日時:
- 10月10日(月・祝) 18:00〜21:00
- 場所:
- 小川里山食農スクールエディベリ(小川町中爪280-3) [地図]
問合せ ⇒ エディベリ高橋優子 090-4453-6355
★【情報3】よりい里山文化祭 10/7〜10/16
こちらは、小川町の隣町「寄居町」にて、企画されているイベントです。 期間中、里山地域の各所でイベントが開催され、各会場を回りながら楽しむことができます。 プレスリリースに掲載されているだけで、15個ものイベントがあります!
- 日時:
- 10月7日(金)〜10月16日(日)
詳細 ⇒ あらかわプレス「よりい里山文化祭」
有機農業に関する全国の話題
★【情報1】NPO法人こどもと農がつながる給食だんだんによる「食のセミナー」
だんだんは学校給食を有機に目指している栄養士や調理師さん達の集まりです。
1 北海道産小麦の魅力「小麦をベースとした農商工連携で地域振興」
- 日時:
- 10月14日(金) 20:00〜22:00
- 内容:
- 北海道小麦で街つくり、地域ブランドで地域振興、そして全国への発信する「小麦伝道師」 佐久間良博さんにお伺いします。
- 会費:
- 800円〜1000円 会員になるとお得な制度になっています。
詳細・申込み ⇒ Peatix 北海道産小麦の魅力 小麦をベースとした農商工連携で地域振興
2 フランスの給食豆レシピ3品「在来種でたのしむ秋の調理教室」
- 日時:
- 10月28日(金) 20:00〜22:00
- 内容:
- 豆ホワイトソースのグラタン、秋野菜とひよこ豆のフライパンファラフェル、 豆の煮汁でチョコレートムース
- 講師:
- 遠藤美香さん(CPPフランスメンバー)
- 会費:
- 800円〜1000円 会員になるとお得な制度になっています。
★【情報2】全国オーガニック給食フォーラム 10/26
こどもたちの食と環境を守り、わたしたちの未来を切り開くために、日本の農業を変えていくために、 オーガニック給食から始めませんか?
当日参加できない方も、アーカイブ動画を視聴できるので、ご興味のある方はぜひお申し込みください。
- 日時:
- 10月26日(水)14:00〜18:20
- 場所:
- 東京都なかのZEROホール(オンライン参加もできます)
- 参加費:
- 1,000円(高校生以下無料) ※ 会場参加、オンライン参加同額
参加方法・詳細 ⇒ Peatix 全国オーガニック給食フォーラム〜有機で元気!〜