US.Peace FARM
 
はじめに
農業体験会
おいしいお野菜届け隊
シェフズテーブル
ファームだより&レポート

レポート一覧

レポート

小川町USPファームだより 2021年8月号

発行日:2021年8月6日
制作:US.Peaceファーム & NPO生活工房「つばさ・游」高橋優子

今月号は

をお届け致します。

今月の農家さん「河村農場」

霜里農場の金子美登さんとご縁をいただいてから US.Peace FARM が活動拠点としている埼玉県小川町には、 兼業も含め70軒を超える有機農家さんが就農されています。

今年度のファーム便りでは、隔月で小川町の農家さんを取材して簡単ですがご紹介していこうと思いますので、 ぜひご覧ください。

今月は「河村農場」さん。 霜里農場での研修を経て就農して(1986年)から35年、 同じ下里地区(すぐ近所)で田んぼ・畑をコツコツとされてきた農家さんです。 これまでに河村農場からは15名以上の新規就農農家が生まれていて、 近くに畑を持つ卒業生たちとは農機具を共同で使用したり、 コロナ前は集まって飲み会をしたり、強い繋がりを持ち続けているようでした。

そんな河村農場の河村岳志さんを、一日、見よう見まねで作業を手伝いながら、 取材させていただきましたのでレポートします!

この日は地区の草刈りがあったため、朝10時に農場に伺いました。

まず、ご自宅の大きさに驚きます。 大正からの農家住宅で、ちょうど就農のタイミングで空き家になっていたところを、 金子さんなどに口を聞いてもらって借りることになったのだそうです。 立派な母屋、長屋門、石垣、竹林…映画の中に入り込んだような雰囲気でした。

8月頭の晴天、とにかく日差しも強く、気温も高い日だったので、 午前中は畑の見学ときゅうり・ブロッコリーの種まきをしました。

<まいた種の上に籾殻のくん炭をかけます>

<ブロッコリーはこんな芽が出るはずです>

<ポットの土は2019年の温床から。屋外温床です>

田んぼは2町5反、畑は5反、 そのほかに農業法人で麦と大豆の生産をされています。 鶏は今はやられていないのだそう。

販売は、提携の会員さん、地元の直売所、お米は直接注文をもらう個人や飲食店へされています。

<河村農場の田んぼ>

<法人ではなく個人で育てる大豆は枝豆用>

金子美登さんのお話では 「10 軒の消費者を一軒の農家で養うことができれば、日本では有機農業でやっていける (『複合汚染その後』有吉佐和子.潮出版社.1977)」とありますし、 河村さんも「2町歩で10数軒の家族に野菜や卵・牛乳を分けられる」とおっしゃっています。

野菜の育たない時期でも野菜セットを作らないといけない難しさは前提として、 その計算が成り立つようにするには多品目でないと成り立たないのだということも分かるし、 それが農の原点だと自分の中で思っている、と河村さん。 「自分の食卓の延長がお客さんの食卓の延長に」ということもよく考えるのだそうです。

その後に、すかさず「でも結局、いろんなものをつくってるのっておもしろんですよね」と 笑顔になるのが、さすがだと思いました。

<最近始めたというミニトマトの「ソバージュ栽培」>

<剪定せず、縛らず…より割れにくいトマトになったそう>

野菜を揃えるのが特に難しいのは、年明けから春先にかけての数ヶ月。 その時期に採れる野菜のことは年中考えながらつくっているのだそうで、 醤油・うどん・漬物(ピクルス)などの加工品や大和イモなどがそれを補う役割をしています。

春先は天候が不安定で気温のぶれも激しく、失敗のリスクが大きい一方で、 もし成功したら、周りの収量が少ないので販売はしやすくなる。賭けですね…。

<大和イモは、必要な分だけ掘れるので貯蔵を考えなくて良い>

河村農場さんの特徴として、「草マルチ」があります。

田んぼの畔に生えた草や、藁などを野菜の根元に敷き詰めて、雑草が生えるのを防ぐ方法です。

<夏野菜の畑の草マルチ>

<里芋畑の藁マルチ>

<すぐに分解されて量が減ってくるが、良い土ができる>

かなりの厚さで敷いていくので、年間を通じて、 とにかくこの草集めに多くの人手と時間を割いているのだとおっしゃっていて、 実際に取材の日にも体験させてもらいました。 1台の軽トラックに押して踏んで…田んぼの周りの草を全て積み込みました。 (かなりの体力が必要です…)

<草集めに使った道具がストッパーに>

刈っても刈っても生えてくる夏の草は田んぼの農家さんの悩みのタネと聞きますが、 こうして余すことなくかき集めて、それが雑草を防ぐこと・土を作ることに活用される。 原点的で画期的な方法だなと思います。

他にも、資源の活用についてはお話を伺いました。 まず、畑の脇には木の枝が積まれていますが、 それは植木屋さんがお風呂とストーブ用の薪として使えるように置いていったものなのだそうです。 また、掘りごたつの炭にもご自身で炭焼きをして使用しています。

今はいないものの、鶏を飼うこともそのひとつ。 鶏は、くず米、ぬか、野菜などが主食なのでエサ代がほとんどかかりません。 それでいて、卵がとれ、廃鶏は肉としていただけ、糞は肥料になります。 養鶏農家でなくても、10羽20羽飼っている農家さんが多い理由がわかりますね。

<これからこの畑に敷かれます>

Web上にあまり情報が出ておらず、農場に連絡するための手段はご自宅の固定電話のみ、 という河村農場さん。最後に、気になってその理由を聞いてみました。

その答えは「特別変わったものもなければ、変わったこともしていないので、発信もしない」というものでした。

河村さんは、池袋生まれの都会育ち。 田舎で畑をする生活は憧れではあるものの、日常からは遠いものでした。 その後、教養を身につけていく中で、学校を出るとすぐに、牧場、霜里農場、と農業の研修に入り、 そのまま就農されています。

専業で農家として生活していても、どこか、都会の喧騒から足を洗ったという気持ちがあるのだそう。 そんな背景を聞いて、家族で地域で、畑と向き合って生きていくことが河村さんのスタイルなのだろうなと、納得しました。

一日でお聞きできること、体感できることはわずかだったかもしれませんが、 35年を経て形づくられてきた河村農場の空気に触れ、本当に学びの多い取材でした。

また、別の季節にもお邪魔できたらなと思います。 河村農場さん、お忙しい中、ありがとうございました!

【シリーズ】霜里農場 金子美登さんと目指す私たちの未来(17)

農場の入口には、しだれ桜があります。 提携消費者が作家の瀬戸内寂聴さんと懇意であった事から株分けして頂いたものです。 毎年、美しい花を咲かせ、農場を訪れる人を和ませてくれます。

農場内にある樹木や生き物にはここにきた謂れがあり、お話しを聞くと、なかなか面白いです。

そして、牛、鶏、犬、猫などがいます。 日本の農業は昔より有畜農業として、草の自給と田畑で必要とする糞と、 家族と仲間で使う牛乳や乳製品に使うためです。

1町歩で牛2頭がほどよい適正数だそうです。 これまで、たくさんの牛たちが農場を行き過ぎていきました。

ある時は、黒毛種と短角牛の掛け合わせ(短黒種)が良い(美味しい)というので、 知り合いをたより、短角牛(雌牛)を購入。 その牛が来た時に、農場内にいた黒毛種(雄牛)は雌牛の鳴き声に反応して、 高さ1mの柵を飛び越えたのです。 え~~~~、重さ 500 kg 以上ある雄の子牛が 1 m のジャンプですよ!!!!!

目の前にいた私は目をまん丸にしてビックリです。愛の力は強し!!!!!

霜里農場にいる動物たちは束縛される事なく、生き生きと暮らしています。 近年、アニマルウエルフェア(※)と言われますが、 霜里農場では最初から生きとし生けるものが生命輝くをモットーとして、 人と共存し、家畜としての生涯を送っています。 人の世もそうであって欲しいものです。

次回は霜里農場の鶏と食の有り様についてのお話しを少ししてみたいと思います。

アニマルウエルフェア

霜里農場の牛の様子が農場Webに掲載されています。

霜里農場 (霜里農場の日々 ⇒ 雌牛ナナの誕生 ⇒ ナナの出産)

今月の小川町の話題

★【情報1】小川町で、七夕飾りの期間がはじまります!

小川町は、古くから商業で栄えたまちですが、 特産品のひとつに「和紙」があります。 平成26年には、ユネスコの無形文化遺産に、 隣の東秩父村と小川町に伝承される「細川紙」が登録されていて、 町内の数カ所で和紙の勉強ができたり、手漉き体験ができたりします。

ただ、皆さんも日常的に和紙にふれる機会が少ないように、 全国的に紙といったら洋紙が主流になったため、 小川町の和紙産業は、昭和初期から苦しい時期を迎えました。

そこで、その復興を願い、小川和紙を使用した竹飾りを盛大に飾る、 七夕まつりが昭和24年(1949)に始まり、今まで毎年7月第四土日に開催されています。

今年は出店を並べたり、花火を打ち上げたり…といったことは難しいものの、 和紙をふんだんに使った飾りは駅周りの店舗や施設の軒先で行われます!

期間は8月5日(木)〜8月9日(月)。 早くもいくつかの店舗では竹かごに和紙の花やのろしを垂らした飾りが出されていて、 まちに彩が生まれています!

小川町観光協会

フォトさいたま

<「フォトさいたま」より>

★【情報2】小川町まちなか(駅周辺)の動き 〜着付けサービスが始まりました!〜

先月号でも登場した駅前の「むすびめ」内の観光案内所では、 7月31日(土)より、着物・浴衣の着付け&レンタルサービスが始まっています。 二日前までの予約制、1回1,500円で、10時から17時までの時間 借りられます。

現在は緊急事態宣言が発令されていて、皆さんにおすすめすることが難しい状態ですが、 秋冬にも着物や羽織を着て、まちを歩くことができるので、情報としてお伝えします。

【情報1】でも触れたように、小川町は商業で栄え、今でもまちなかを歩いていると、立派な商家に出会えます。 まちの中央には槻川(つきがわ)が流れ、その風景から「武蔵の小京都」と呼ばれています。

そんな町並みを和服を着て楽しめたら!と、観光案内所のスタッフが企画をして開始されたのですが、 ひとつ、興味深いお話があります。

じつは、案内所でレンタルされる着物のほとんどは、町内のお母様方から譲り受けたもの。 参観日などの学校行事や、ちょっとしたお祝い事の日に着るようなカジュアルな着物を、 家で眠らせているのがもったいないと思っている方が案内所に持参してくださって、 50着ほど集まったのだそうです。

小川町の方が持っていた着物は、やはり小川町の雰囲気によく合うので、 そのお話だけで良いサービスが生まれたな、なんて思います。

詳細は、むすびめFacebookをご覧ください。

むすびめFacebook

★【情報3】Youtubeチャンネル「発酵農園」のご紹介

小川町に最近活動拠点を移した発酵の研究家のお二人のチャンネルをご紹介します!

日本食料理人であり発酵調味料研究家の阿部舜さんと、 韓国料理人であり韓国伝統調味料・保存食研究をしている島田梢さんが、 日本と韓国の発酵食、料理や調味料の紹介をしているチャンネルです。

発酵バター、コチュジャン、発酵親子丼、ジンジャーエール、飯麹… 聞いたことのないものが多いですが、レシピを見ているとつい作りたくなってしまいます!

「じゃがいもを60℃まで下げる理由は60℃以上だと麹菌が死んでしまうため。」 「日の当たるところに置いておくと産膜酵母やカビの原因となるので日陰におく。」など、 レシピの最後に、原理原則が詳しく解説されているのが、研究家らしいところ。

発酵に興味のある方は、ぜひチェックしてみては?

YouTube 発酵農園

レポート一覧